〆切が迫る中メンバーが両足捻挫。ノベルゲーム制作サークル「超水道」初コミケの思い出

高校生の頃からコミックマーケットに参加し、数々のノベルゲーム作品を世に送り出してきた「超水道」。今では実績豊富なベテランサークルのひとつですが、彼らも初めてのコミケは苦難と試行錯誤の連続でした。「STAGE vol.1」の第一弾では、そんな超水道のメンバーに突撃取材!初めてのコミケ参加時のことを洗いざらい聞いてきました!

高校生のときに、友人たちとサークルを作った

ba9760e7
超水道による最新作「ghostpia」。クラウドファンディングで大成功するなど、今後の展開が注目される。

サークルの活動內容やメンバー構成、各々の役割について教えてください。

ミタ「超水道」という名前でデジタルノベルゲームのサークルをやっています。サークルとしては現在4人体制で、今はghostpia[1]という作品を作っていますね。2年前に大学を卒業して、いまは働きながらサークル活動をしています。
ぼくなんかは、普段Web系のエンジニアとして働きつつ、超水道ではシナリオを書いたり、あと最近は小説[2]も出版させていただきました。

すずめぼくは、主には超水道の作品のイラストレーションだったり、グラフィックや素材づくりをしながら、あとはプログラミングといいますか、ゲーム自体の動きをつくったりしています。普段はDTPの仕事をしています。

ミタ他にはイラストやシナリオを書くメンバーが2人います。

サークルのメンバーはどうやって集めたんですか?

ミタ最初の段階では、小学1年生からの付き合いで高校では美術部に入っていた斑[3]というメンバーとの2人でつくりました。ぼくが文章書いて、彼が絵を書いてノベルゲームつくらない?ってのがはじまりですね。そのころ、まだすずめくんはいなくて、彼は別の高校でバンドをやっていたんですよ。

すずめ中学は一緒だったので知り合いだったんですけど、高校は別でした。ミタくんから声をかけられたのはぼくが大学の浪人をしているときですね。夏季講習がはじまるっていうときだったんですけど、「面白いことやってるんだけど息抜きに絵を描いてみない?」ってすごく誘いを受けました。当時は、ぼくは同人とか知らなかったんですけど、ホイホイと誘いにのって、そこからズルズルと(笑)。最初は絵を描くだけだったのが、途中からWebサイトも作ろうとなり、中学のときに少しHP制作とかしていたので、やってみようかなと作り始めたのがきっかけでプログラミング系のこともやるようになりました。

サークル名の「超水道」にはどんな意味があるんですか?また、どうやって決まりましたか?

ミタ由来は他のインタビューで言っていたりする[4]のですが、実はそれは嘘で、あとから由来を考えました(笑)。本当は、ぼくがトイレにいっている間に決まっていたというのが正直なところです。

そうなんですね。はじめての段階から確定していたのですか?

ミタそうですね。当時出ようとしていた同人即売会のイベント申し込み画面を前にして・・。「こんなふざけた名前でいいのか」とか「ただ三文字はいいぞ」とか適当なこといいながら。

すずめ最初は横文字とかも考えようとしていたんでしょ?

ミタそうそう(笑)。もう走り出したら変わることも少ないので、とりあえずなんでもいいからつけちゃおうみたいなノリでもいいんじゃないですかね(笑)。

HN(ハンドルネーム)とかも最初は迷う部分ですけど、どうやってつけましたか?

ミタ本当に適当でしたね。たしかぼくの場合は当時三田線に乗っていたので、そこからですね。mixiかなんかのアカウントをつくったときから使っています。すずめくんは超水道に参加するにあたって名前必要だよねって決めたよね?

すずめその場でつけましたね。なんかこう、ネット越しなので男感を匂わせない女性ともとれるような中性的な名前にしようと考えていて・・それで、「なんか山本って女性っぽい名字だよね」「あとは鳥の名前とかつけたいね」「じゃあすずめにしよう」という感じで決まりましたね。けっこう適当です(笑)。

サークル活動をはじめようと思ったきっかけはなんですか?

ミタまだ高校2年生のときに、当時演劇部に入っていたんですけど、引退が割とはやくて・・。まわりはみんな受験とか言い出しちゃったんですけど、まだなんか作りたいなって。それで、作るなら元は取りたいなって。なんか作るならお金だしてもらって売りたいし、そのやりとりに憧れていたというのもありました。「自分の作品ってどのくらい価値があるんだろう?」「ちょっと利益とかでたら嬉しいな」ていうのを体験したかったんですよね。
あと、演劇部をやっていて思ったのが、劇場とかでやるとお客さんよりも演者のほうが多かったりするんですよね。(演劇を)作りたいのはわかるけど、お客さんがいない劇場でやってもしょうがない、はじめからみてくれる人がいるところで発表しないと意味がないと思っていて、そこから即売会とかに出ましたね。
なので、本当は最初からオリジナルをやろうと思っていたんですけど、人に見てもらえる二次創作のジャンルをやろうということで、当時流行っていたのもあり「東方[5]」のオンリーイベントに参加しました。

初コミケではジャンルコードを間違えて、18禁のエリアで頒布

ashitahadokoheikouka
初のコミケ参加時に頒布した超水道にとって初のオリジナルノベルゲーム作品「明日はどこへ行こうか。」

ではコミックマーケットがはじめてではないんですね。コミケはいつごろ参加したんですか?

ミタコミケへの参加は、その翌々年くらいですね。はじめてのイベント参加からコミケまでの2年ちょっとで、オンリーイベントなどに6回くらい参加しています。

はじめてのオンリーイベントに参加したとき、難しかったこととかありましたか?

ミタはい。はじめてのイベントは期限ギリギリの段階で「参加しよう!」ってなったのですが、まず、入稿って言葉も知らないし、そもそも高校2年の自分に参加資格があるのかってところがわからなくて。だって18禁のものとかも売ってるわけじゃないですか(笑)。それで、年齢的にはOKだということがわかったんですが、次はサークルカットがわからないって(笑)。グレースケールで入稿しないといけないのですが、「グレースケールってなんだ?」っていうところからわからなくて・・。

それでオンリーイベントにも慣れてきて、オリジナル作品でコミケ参加を果たしたわけですが、初コミケで印象に残っていることはありますか?

ミタ(オンリーイベントのときと違って)申し込みが難しいというか面倒でしたね。当時は今よりも申し込み画面が高機能でなかったので。あとはジャンルコードが大きな壁で、当てはまるところがわからなくて・・。ぼくたちの作品は全年齢向けのオリジナルノベルゲームだったんですが、よくわからないまま申し込んだらオリジナルの18禁の島に配置されてしまって・・(笑)。

すずめあれは焦ったねー(笑)。当日、スペース番号をもとにブースに行ったらあたり一面ピンク色なんですよ(笑)。うちの作品は王道ノベルゲームで、ポスターとかも青空に白いワンピースの少女という感じだったんですけど、ピンク色の中にひとつだけ青い色だったので、かなり目立ってましたね。

それはすごい経験ですね(笑)。ターゲット層が違いそうですけど、売れ行きはどうでした?どのくらい刷ったんですか?

ミタそれがですね、逆にそれが目立ったのか、けっこう捌けまして。30くらいは売れましたね。目標は50くらいでした。はじめてにしては売れたほうだと思います。18禁島に配置されたときは「死んだ!」と思いましたけど(笑)。

すずめでも冷静に考えると、逆に良かったんじゃないかなと思っていて。同人ゲーム島に比べてオリジナルの18禁島はお客さんの母数が圧倒的に多いから、そのぶんリーチする数も馬鹿にできないんですよね。つまり、正しくジャンルを申請するよりも、結果的にとはいえ間違ったジャンルのほうが同人ゲームは売れるんじゃないかと思いました。

ミタ実は、2回目の参加から正しくジャンルコードを申し込んだんですよ。そしたら全然人がこなくて、来てくれたお客さんもターゲットとは少しずれていました。なので、その次からはジャンルを少しハックしている部分があって。
ぼくたちの作品はオリジナルノベルゲーム、つまり電子ノベルだから電子書籍の仲間で、そして電子書籍とは本の仲間だから、ということで、オリジナルの創作本を売るスペースにしているんですよ。つまり、イラストレーターさんがオリジナルのイラスト集とか配布するスペースなんですけど。今じゃ、そこでずっと出していますね。

当日が迫る中、両足を捻挫

コミケ当日までの制作スケジュールは順調でしたか?何か苦労とかありました?

ミタ実は、当日の朝まで出来上がらなくて、当時はディスクをパッケージにして売っていたですが、(CDRに)その場で焼きながら売っていました。パッケージを印刷した空の箱とレーベル印刷したCDRだけ用意していて。当日の朝までデバッグしていたので、ゲームの入ったPCごともっていって、会場でディスクに焼いて売るという・・(笑)。
あとは、最初からゲームはPVが大事だと思っていて、2人イラストレータがいたので、フルアニメーションのPVを作ろう、と。それで、製作期間の3分の2くらいが費やされて、残りの3分の1で本編を作るということになってしまい、その影響で作品の尺も削ることになりました。ただPVは意地でも出しましたけど。

すずめそもそも、制作をはじめたのが遅くて、8月末から作り始めたんですよ。冬コミへの参加を決めてから、秒間8コマで3分の動画を作ろうと決まって。それで9月と10月をフルに使ったんですけど全然完成しなくて・・。気付いたら12月頭になっていました。それで残り1ヶ月もない中、ゲームの続きを作らないといけなかったのですが、終わるはずもなく、背景とかもすごく削りました。そのときは(ゲームに使う)CGを1日7枚描くみたいな感じで。当時浪人生だったこともあり、昼は予備校にいっていたので、夜に描いていました。
そのときですね、両足を捻挫したんですよ。疲労で。

ミタあれが一番インパクトあるな(笑)。

すずめ最初は右脚を捻挫して・・。医者がいうには、大股で早歩きのしすぎが原因みたいなんですけど、時間に追われていたし、予備校終わってすぐに帰らないと制作が間に合わないという気持ちがあったもので。あまりにひどいともう片方の脚にも影響でてくるから気をつけてくださいと言われた翌日にもう片方も捻挫しました(笑)。
だから、松葉杖をつきながら、朝は整骨院に通い、昼から夜まで予備校で勉強して、あとはひたすらCGを描くという・・。12月はそんな感じでしたね。

ミタそこから反省もあり、アニメーション動画はやめました。あとは作品の長さにも注意を払いましたね。同人誌ならページ数みたいな。

はじめてだと、尺の長さというかページ数って難しいですけど、どうやって決めればいいと思いますか?

ミタそのあたりは正直、自分たちでやってみて大爆死してみないとわからないんじゃないでしょうか。想像つかないですし。

ちなみに、制作中のチームでのコミュケーションはどうしていましたか?

ミタ当時はMSNメッセンジャーですかね。あとはPCのメールとか。

すずめ斑くんとは家電でやりとりしてたよね(笑)?

ミタはい。彼は高校3年生まで携帯をもっていなかったので、家に電話してイラストの打ち合わせとかをしていました。いまはSlackをメインに使っています。
あとはオフラインと半々くらいです。

活動拠点はどうしていましたか?

ミタ基本はファミレスとかマックとかですね。各々の作業は自分の家でやりますが。けっこうぼくたちは対面でやることが多いと思います。

すずめ基本的には、ファミレスとかで会議やらラフ起こしを一気にやってしまい、細かい作業は家でやるという感じですね。外でやるときはがっつり1日とか使っていました。
最近だと外部の人に協力してもらいながら作ることが多くなってきましたが、なるべく顔をあわせるようにしています。地方の方でも東京にでてきたときに会うようにしたり。そのへんの対面での安心感みたいなのはありますね。

ミタコミケが近づいてくると、顔を合わせるための移動時間も惜しくなってくるわけですよ。そうなると対面でやらなくなってしまい、結果的にパフォーマンスが一気に落ちて、質も下がるという負のループになってしまいますね。なので対面はとても大事です。

制作と並行して宣伝も必要ですが、そのあたりはどうしていましたか?売るための秘訣というか。

ミタ宣伝はPVをメインに据えてやろうとしていました。はじめてのコミケでオリジナルPVを作る気合の入ったやつらだという話題性を持たせようと。当時はもうTwitterがあったので、Twitterを使っていましたね。
ただ、やっぱり友達がいればいるほど買ってくれるので、宣伝頑張るよりも50人仲良い人を作るなり声をかけるほうが売れるっていう現象が存在していて・・。なので、そんなに宣伝に躍起にならなくても、友人が来てくれたり、フォロワーさんが来てくれたり、あとはふらっと寄って買っていってくれる人もけっこういるので、実は思っているより売れたりします。

すずめ最初のころは、通りがかりの人に声をかけまくっていたんですよ。八百屋かっていうくらい。ミタくんは演劇部だったこともあり、声がすごく通るし、大きいんですよね。
それで、ちょっと目が合った人とかが苦笑しながらも、説明聞いているうちに買ってくれたり。なので、地道な声かけも効果あるかもしれないですね。

ミタあとは、ブースには机があると思うので、そこをいかに飾り付けるかで差はつくんじゃないかと。布一枚引いて本を載せるだけでも違いますし、慣れてる感を出すのも効果あると思います。そのまま机にただ並べただけでは地雷感もあってまずいかなと。

自分たちの作品に自信を持つことが大事


「ghostpia」のPV。

さいごに、サークル参加を考えている人にメッセージをお願いします。

ミタつくるのって楽しいですけど、売るのも同じくらい楽しいので、当日はけっこう期待していいですよってことですかね。

すずめ売れるのは楽しいよね。気持ちはわかるんですけど、けっこう最初は控えめな値段設定しちゃうとかってあると思うんです。でも値段っていうのは自信の表れでもあるので、自分がちゃんと作ったのであれば、ちゃんと値段をつけてもいいと思います。うちはわりと強気ですね。実際、強気でつけても売れたりするんですよ。

ミタ実際、すずめくんが捻挫までしてつくってくれたものに、原価割れギリギリとかで値段つけちゃいけないと思うんですよね。(サークル活動を)長く続けていきたいんなら、自信は持つべきだと思っていて・・。値段ってメンバーの誰かが決めるわけですけど、それって意外と他のメンバーにとって大きなことで、値段というのは「あなたたちの作品はこれくらいの価値だよ」って決めることなので、とても重要な瞬間ですよね。だから自信を持って作品を作れるかは大事にしているし、自信をもっていれば作ってて楽しいし充実感もあります。

すずめチームで作っている瞬間ってすごく楽しいので、それを信じてやっていて、作品に自信もあれば、たとえ当日売れなかったとしても「これが売れないのはおかしい!」「じゃあ原因はなんだろう」となるので、次のことを考えるんですよ。その流れが常にあれば、じゃあ次はこれを変えよう、これにチャレンジしてみようというように毎回目標設定ができるので、サークル活動を長く続けていくことができると思います。

ありがとうございました!

◯ 超水道の公式Webサイト→ http://chosuido.jp/
◯ 最新作「ghostpia」→ http://ghostpia.xyz/