”同人活動は自分の集大成” 同人サークル「Dancing Girl.」Ryo Nakae氏の創作活動の考え方

2015年の夏から活動開始し、現在2冊の同人誌を発行している「Dancing Girl.」。企画からイラスト、編集、デザイン、Webサイト制作まで、すべてひとりでこなしているというRyo Nakae氏ですが、はじめから全てができていたわけではなかったそうです。「才能がなくても、自分の考え方次第で同人誌は作れる」というリアルな言葉は、コミケに出てみたいけどなかなか踏み出せないすべての人にとって後押しとなること間違いなしです。

ぜんぶ自分でやることにあこがれがあった

サークルの活動やメンバー構成について教えてください。

Ryo Nakae「Dancing Girl.」という名前でサークルをやっています。2015年の夏コミ後に活動をスタートしました。活動內容はぼくの中では特に決めていませんが、とりあえず現状ではアイカツ[1]の二次創作をやっています。メンバーはぼく1人ですね。売り子やイラストの寄稿などで手伝ってもらったりはしますが、基本的にはすべて自分でやっています。

サークル名の由来は、昔、大学生のときに自分のポートフォリオサイトを作っていて、それが「Dancing Girl」という名前だったからです。いまはドメインの更新を忘れてサイト自体は存在していないんですけど、名前を気に入っていたのもあって復活させたという感じですね。

「Dancing Girl.」という名前は同じでも、內容は全く違ったということですか?その時からサークルの構想は頭にありましたか?

Ryo Nakae当時は全然考えてなかったです。普通に、制作したサイトなどを掲載していた自分のポートフォリオでした。それで、サークル活動をはじめようと考えていた時に、その当時のサイトのことを思い出したので、同じ名前を使って新しく立ち上げました。一応、そのときと同じサイトではないという意味を込めて、現在の名前ではアルファベットの最後にピリオドをつけて「Dancing Girl.」としています。

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「Dancing Girl.」のWebサイト(http://dncngrl.com/)。

そもそもなんで1人ではじめようと思ったんですか?メンバーを増やそうと考えたりはしているんですか?

Ryo Nakaeメンバーを増やす予定はないですね。ひとりでやるのにあこがれていたというか、そういうマインドが昔からあるんですよね。イベント当日は1人だと何かと不便なので手伝ってもらったりはしますけど。やれることは全部自分でやりたいんですよね。 そもそもWebデザイナーになったのは、Webサイトを作りたかったからなんですよね。なので、デザインも実装も1人でできてしまった方がいいという気持ちがあります。同人誌は、そういう「全部オレ!」みたいなのがやりやすいので、ひとりでやっていますね。
ただ、流石に全部1人だと手が回らずにページが足りない・・!となり、作った2冊の同人誌は両方とも友人にお願いしてイラストを寄稿してもらっています(笑)。

すでにコミケに2回参加されていますが、そもそもサークルをやろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

Ryo Nakaeもともと興味はあったんですけど、なんか敷居が高そうと思っていて、なにからやったらいいかわからないし・・という感じで時間がたったんですけど、一番のきっかけは昨年のコミケ(C88)に行ったことですね。ぼくの周りにはもともと同人クラスタの人がけっこういたんですけど、それまで会場に行ったことはなかったんですよ。
それで、実際に行ってみたら、あの会場の熱量に圧倒されて・・。「よしやろう!」って。帰りに申込書を買ってすぐに申し込みました。あと、よくよく考えると同人誌って振り幅がすごく大きくて、ある程度なんでも許されるというか。例えば、仕事だったら一定の成果物を出さないといけないけれど、同人だったら好きにやっていいわけで、意外と気が楽なんじゃないかなって思ったんですね。

それではじめて冬コミ(C89)に参加したということですね。

Ryo Nakaeはい。コミケ以外にも、オンリーイベントだったり、有名な同人即売会の存在は知っていたんですけど、一番最初はコミケに参加したいという気持ちが自分の中にあって。周りからも「なんでコミケ?もっと小さいイベントから出てもいいんじゃない?」ってすすめられたりもしましたけど、やっぱりまずはコミケだろうと。特に明確な理由があるわけじゃないですけど、そう思っていましたね。あとはTwitterのプロフィールに「主宰」って書きたかったんですよね。あれかっこいいなって(笑)。

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Dancing Girl.として初となる同人誌「Dancing Girl. Vol.01 Orchid & Violet」(http://dncngrl.com/dg01)。

同人活動は、いままでやってきたことの集大成

本職がWebデザイナーということですけど、イラストを描くという経験はもともとあったんですか?

Ryo Nakaeあんまり描けないんですけど、昨年の頭くらいに同人楽しそうって改めて思って、「絵を描けたら同人誌出せるのではないか」と、気合入れてやってみようと思いました。といっても絵をうまく描けるわけじゃないので、がんばってでっちあげている状態ですね。

その話でいうと、全然描けなくても、でっちあげればいいんだっていう気持ちになったのが最近なんですよ。

学生のときにペンタブを買ってすぐに埃をかぶらせていたときは、絵を描くというのは、いますぐに落書きしてもスラスラと描けるくらいじゃないとダメだと思っていたんですよ。
でも、いざデザイナーとして働いてみたら、実際にはそんな感じで(スラスラと)作っているわけではないんですよね。何も見ずに作れる人ってめちゃくちゃ少なくて、ほとんどは参考サイトを見たりしながらつくるわけです。もちろん、パクるのはいけないですけど、要点をつかみながら自分の中で消化してアウトプットする。そういうことを仕事でやっていく中で、これは絵でも一緒だなと思いました。例えばポーズとか思いつかないから描けないと思っていたんですけど、Pinterestとかにあがっている写真を参考にしながら描いたり、ペイントソフトの3Dデッサン人形にポーズをとらせて観察したり・・。
それって別にだめなわけではなくて、自分がどこまで許すかだと思うんですよ。もちろん、何も見ずに描けたらすごいですけど、描けないからやらないってのはもったいなって。
だから、仕事ではないですけど、やり方とかは仕事で学びましたね。いい意味で諦めというか妥協していいんだと。

2冊目の同人誌は、背景メインのイラスト本だったんですけど、背景も描けるわけではないんです。ただ、仕事で普段Photoshopを 使っていて、写真の編集とか切り抜きとかはできるので、マットペイントという手法を選びました。他人の写真を使うのはだめですけど、自分で撮影した写真だったり、フリー素材を使ってやってみると、「これはいけるな」と。完全にオリジナルでゼロから全部描かないといけないわけじゃないと気づけたのは大きかったですね。

では、同人誌はスキルや経験の集大成という感じでしょうか。

Ryo Nakaeそうですね。いろんなエッセンスがうまく噛み合った感じですね。昔は背景を描けないからといって写真を加工してマットペイントをすることもできなかったわけですけど、いまは仕事でやっているからできるようになったし、趣味で写真をやっていたおかげで、光の加減とか構図とかもわかるようになったし。
そういう広く浅くやっていたことがつながったのが同人誌です。
前は、スペシャリストになれないことというか、どれも6割くらいしかできなかったことがコンプレックスでしたが、6割のスキルをたくさん持ってればいける、と思えたのはけっこう嬉しかったですね。器用貧乏を続けてきて、やっと報われたなと。

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Dancing Girl.にとって2冊目となる同人誌「Dancing Girl. Vol.02 Another World」(http://dncngrl.com/dg02)。

自分のできる範囲でやるのが一番

本を作るという経験もはじめてだったんですか?

Ryo Nakaeはじめてですね。ずっとWebデザインしかやってこなかったので・・。グラフィックデザインをかじっていたらちょっとは楽だったと思います。Illustratorをいじることはできるんですけど、入稿のやり方が分からなかったし、CMYKとかトンボとかめちゃくちゃ調べましたね。あとは周りのグラフィックデザイナーの知り合いに聞いたりとか。大変でしたね。

他にコミケ参加にあたり不安だったことははありましたか?

Ryo Nakaeやっぱり申し込みですかね。不安だという意味では一番そうですね。入力項目も多いし、アンケートも当落に影響しますって書いてあるし・・・。これでいいのかな・・って思いながら入力していました。あとはサークルカットのサイズとか、フォーマットがあってるのかも不安でした。だからサークルカットに関してはかなりググって調べたり参考にしました。
あとは、当日の搬入の話ですが、1回目のコミケでは印刷会社さんのプランを使いました。自分の席にダンボールを直接届けてくれたのですごく楽だったんです。ただ、2回目は家からダンボールを郵送して会場に届けてもらう方法にしたんですけど、会場の集積所にいろんなサークルさんのダンボールが積まれていて自分で探しだすと聞いていたので、間違ったらどうしようとか、見つからなかったらどうしようとかは思いましたね。

やっぱり申し込みは不安な方が多いですね。コミケ当日に関しては苦労したことはありますか?

Ryo Nakae実はぼく、もうひとつ別にサークルをやっているんです。Dancing Girl.と同時期に作った「Uncalms」っていうサークルなんですけど。そっちは3人でやっていて、Tシャツとかグッズを作っています。コミケには合同申し込みというのがあるんですが、それで申し込むと隣同士のスペースになるんですけど、最初は知らなくて普通に申し込んだら、けっこう離れたスペースになっちゃったんですよ。それで、お互いに委託をしていたんですけど、在庫の補充とかがとにかく大変で・・。会場がめちゃくちゃ混んでいる中、行き来したりしていました。
あとは、終わってからの精算ですね。ちゃんと管理していなかったというのもあり、何が何部売れたとか、どっちのサークルの売上なのかとか・・。お金の問題で揉めたくなかったので、しっかりと反省会をして、それ以降はちゃんとお金の管理をするようにしていますね。今はちゃんとメモをしたり、お会計を分けたりして、うまくやっています。

ほかに初めてで苦労する点としては、何部刷るかというのがありますが、どのように決めましたか?

Ryo Nakae確かにすごく悩みましたね・・。ぼくの場合はめちゃくちゃビビりまくってかなり少ないんですけど、40部刷りました。でも挨拶などで半分くらい捌けてしまったので、そこはミスったなと思いつつ、残りはすぐに完売したのでありがたかったですね。そのあと、アイカツのオンリーイベントで同じものを250部刷って再頒布したんですが、そちらもなんとか全部売れまして。2回目の参加では逆に刷りすぎましたね。ただ、売り切れたら興味をもってくれてる人に申し訳ないし、3〜4割売れれば印刷代もペイできるので、余ってもいいかなって考えました。結局余ったんですけど、今後少しづつ頒布していけばいいかなって思っています。

部数に関しては本当に難しくて、やっぱりはじめてだと部数ってすごく気になるじゃないですか。それでコミケの先輩とかにも相談したりしたんですけど、「刷りたい分剃ればいいじゃん」って言われるわけですよ(笑)。例えば、趣味に使える金額が5万円だったら、その範囲内で刷れるだけするみたいな。ぼくも最近は同じように思い始めています。
売れるとお金が入るんで、単純に嬉しいし、どうしても利益をだしたくなったりするんですけど、そういう気持ちでやるというよりは、普通に自分のできる範囲で無理せずにやるのが一番楽しいんじゃないですかね。

思っているより敷居が高くないし、何より楽しい

いま1人でやられてるわけですけど、モチベーションとかスケジュール管理とかどうしていますか?

Ryo Nakaeそれは気合ですね(笑)。幸い、もうひとつのサークルは3人でやってて、スケジュールなども決めているので、それに合わせてDancing Girl.でもやっていましたね。なので、ぼくだけ作業は2倍とかだったんですけど。仕事もあるし。そういう意味では、社会人で同人活動やっている人はすごいなあって思いますね。時間の確保が難しいので。

さいごに、これからサークル活動をはじめようと考えている人にメッセージをお願いします。

Ryo Nakaeサークル参加って申込みも難しいし、Twitterでバズってるイラストとかはすごくて自分には描けないって感じたりすると思うんですけど、気にせずにやりたいものをやればいいと思います。敷居は意外と高くなくて、いろいろと大変だったり難しいこともあるんですけど、ひとつひとつ分解してみたら不可能ではないなっていうのがわかってくるんですよね。やっぱり同人活動は楽しいです。ときどきめっちゃ辛いですけど(笑)。
あとはやりたいけど悩んでいるのであれば、コミケに行けばいいと思います。コミケの実況ツイートをみているだけだとやる気があんまりでないですけど、実際に行くと圧倒的な熱量を感じられてやる気が出ると思いますよ。

ありがとうございました。

◯ Dancing Girl.の公式Webサイト→ http://dncngrl.com/
○ Uncalmsの公式Webサイト→ http://un-calms.tumblr.com/